『ドービニー展』へ
山梨県立美術館で行われている「ドービニー展」に行ってきました。
当日は、山梨「県民の日」で、常設展、企画展ともに無料。ということで、平日の割には混んでいましたが、それでも長蛇の列というほどでもなく、心ゆくまでゆっくり鑑賞することができました。
ミレー館
まずは、ミレーの作品を集めたミレー館から鑑賞しました。
嬉しいことに、「県民の日」ということで今日だけ特別に県立美術館所蔵の作品は写真撮影が可能でした。
この2作品は山梨県立美術館が40年前に最初に購入したミレーの作品です。
そして、開館40周年の本年新しく購入したのが「角笛を吹く牛飼い」という作品。
山梨県立美術館所蔵のミレーの原画は、これで70点目となるそうです。
しかし今回の本命は、ドービニー展の特別展の方です。
ドービニーは、バルビゾン派から印象派への架け橋ともいわれている作家で、山梨県立美術館にも1作品収蔵されています。
ミレー館の最後にその1点が展示されていて、次の特別展「ドービニー展」への入り口になっているようでした。
ドービニー展
シャルル=フランソワ・ドービニーは、ミレーやコローらバルビゾン派の画家のひとりとして知られたフランスの風景画家です。
今回、このような規模で個展が開かれるのは日本で初めてだそうです。
どちらかというと、バルビゾン派のミレーや印象派のモネなどに比べて知名度がそれほど高くないドービニー、私自身もこの展示で初めてその名を知りました。
そんな人の為に、展示室に入ってすぐのコーナーでは、アニメーション作家の城井文さんの書下ろしでドービニーの生涯が紹介されていました。
このアニメを見てから展示室に進むと、ドービニーがグッと身近に感じられます。
最初に展示されている作品は、ドービニー初期の作品「聖ヒエロニムス」という宗教画です。
当初は風景画の中に宗教や神話の主題を込めた歴史風景画家を志していたようですが、度重なるコンクールでの落選で、ドービニーは身近な自然の美しさを表現するようになっていったそうです。
画家としての最初の挫折が、その後の彼の画風を方向付けただけでなく、美術史をも変えていくきっかけとなったことを思うと、人生の転機の不思議さを感じます。
自然をありのままに描き出す彼の作品は、やがてサロンでも高く評価されていきますが、一方で「印象」を「荒描き」したにすぎない「未完成」の作品との酷評もされます。
それでも、アトリエ船「ボタン号」で河川を旅しながら主に水辺の風景を描き続け、独自の制作スタイルと画風を確立し、サロンでの地位を確かなものしていきました。
その画風や制作スタイルは、印象派のモネやピサロ、ゴッホなどに影響を与えたといわれています。
奇しくも批評された「印象」を「荒描き」という画風そのものが、のちに印象派として確立されていく事を思うと、ドービニーの美術史に果たした役割はものすごく大きなものだったんだなと思いました。
ドービニーの絵は、水辺の自然と人々の暮らしを描いたものが多く、特に澄んだ川の水がとても美しく表現されています。
ですが、それ以上に私は、空の色の何とも言えない色合いに魅かれました。
時間の移ろいとともに、陽の光と雲の流れの変化が繊細に描かれ、どの絵の前でもくぎ付けにされてしまいます。
また、特別出品としてクロード・モネの《セーヌ河の朝》という作品が展示されていますがドービニーがモネに与えた影響も一目瞭然で伺うことが出来ます。
今回の展示では、国内外の有名な美術館や個人で所蔵の作品も含め、ドービニー本人の原画が約80点ほど展示されていて、実に見応えのある特別展示でした。
美術展の図録も購入。ドービニーは画集なども日本では販売されていないので、作品が多く掲載されている美術展の図録は大変貴重だと思います。
庭園の散策
ミレーも含め、圧巻の絵画を心ゆくまで鑑賞した後は、ゆっくり庭園を散策しました。
残念ながらこの日は雲に覆われていて、富士山は見えませんでしたが、庭園のモミジは今が見頃。
「芸術の森公園」として整備されている庭園は、モミジを鑑賞しながら歩くのにもとても心地よい空間でした。
庭園を一周して駐車場に出ると、黄金色したイチョウ並木の間から甲斐駒が岳が良く見えました。