天王洲アイルとT.Y.HARBOR(ティーワイハーバー)に行ったときのこと【東京】
数年前、夫の仕事の関係で一年ほど東京と山梨で二地域居住していたときのことです。
年始は東京で迎え、久しぶりに夫と東京散策。朝はゆっくりと九時頃に起きてから、軽い朝食を取り、まとまった洗濯物を片付けたあと、りんかい副都心線で天王洲アイルに向かいました。
天王洲アイルは、駅名もハイカラですが、長い上りのエスカレーターを出た途端に見えるタワーマンション、そびえ立つホテルやオフィスが入った高層ビル、きっちり区画整理された遊歩道も含め、いかにも「The 東京」という印象でした。
駅からは、お目当てのブルワリーレストラン「T.Y.HARBOR」まで五分ほど歩きました。
この冬は東京も暖冬だと聞いていましたが、意外に空気は冷たく、ビルの日陰では思わずコートのボタンを全部留めました。
途中、ビルの合間の小さな公園には、親子でおしゃれな服装をしたファミリーや、トイプードルを連れた初老のご婦人が散歩していて、外国のようだな、と思いながら歩を進めました。
色々なレストランが入ったテナントビルを行き過ぎると、目の前に運河が見えてきます。
運河の周りの通路はウッドデッキになり、白いヨットが停泊している様子は、まるでドラマの一場面のようでした。
風もほとんどなく、日なたに出ると今度は陽の温もりを感じ、陽の光を浴びると冷たい空気もかえって心地よく、思わず深呼吸。ほんの少しだけ潮の匂いがしました。
ウッドデッキの途中には、向こう岸まで続く歩行者専用の橋が掛かり、「ふれあい橋」と名のついたその橋は、珍しい形のレトロな雰囲気で、アーチ型の床は木製。踏み込んでも足に優しい歩き心地でした。
吊り橋のように少しだけ揺れるのが面白いのか、小さな子どもたちが数人、バタバタと追いかけっこ。橋のたもとでは、すらっとした若いママさんたちが、「ほらほら、気をつけてえ」と声をかけています。
左手に、「T.Y.HARBOR」が見えてきました。
店の手前には、パラソルが並びペット同伴席になっているようです。さすがに冬場は潮風が寒いからか、外のテラス席は空いていましたが、一組だけ、ワンちゃんと一緒にランチをしているお客さんがいました。
入り口のドアを開けるとすぐに、スタッフが受付までエスコートしてくれました。
運河の倉庫だった場所をリノベーションしたという店内は、天井がとても高く、350席のダイニングは広々としています。ビールのタンクやタップが何台もあり、まるで映画に出てくるニューヨークのシーンにでも紛れ込んだようです。
運河を見渡せる屋根付きのテラス席には、保温のためにカーテンのようにビニールシートがかかっていました。どうやらストーブも完備されているらしく、こちらは冬でも満席でした。
受付で聞くと、室内の席だったらすぐに入れるということで、テラス席は諦めました。
まもなく、てきぱきと機敏に動く若い女性スタッフに、奥のダイニング入り口の席まで案内されました。
コートを脱いでソファに座り、ほっと一息。ゆっくり周りを見渡すと、お客さんのほとんどが、20代から30代の若者。小さな子どもやベビーカーを押しながら入ってくるお母さんたちもいて、ああ、時代が変わったんだなぁ、としみじみ思いました。
ドレスコードは特になく、それなりにカジュアルではあるものの、おしゃれな空間なので、皆服装もおしゃれな雰囲気で、店内に私たちの世代はあまり見かけず、最初は少し気恥ずかしかったのですが、これも東京ならではの経験だと思うとわくわくしてきました。
スタッフは人数も多く、国際色豊かで、どの人も感じがよく、こちらの合図にすぐに気がついて駆け寄ってきてくれます。
メニュー表を眺めていると、スタッフが飲み物とランチのおすすめを説明してくれました。
まずは、もちろんクラフトビール。何種類かのなかから、夫はペールエールというこのお店定番のビール、私はウィートエールというバナナの香りがするベルギービールにしました。
サイズは、Sからピッチャーまで五段階。Mサイズのビールと一緒に、ぶりのカルパッチョと本日のスープ、シーフードピザを頼みました。
慣れないせいか、待っているあいだ、どうしてもキョロキョロと見回してしまいます。どうやら二階席もいくつかあり、吹き抜けになっているため、かなりの高さから店内や運河を見渡せる席となっていました。
一階のフロアは隣の席が近いので、あまり大きな声で話せそうにありません。
それでも、いつもより少し小さな声で、普段なかなか話さない夫の会社の同僚の話や、暮れに帰省した息子の話、明日はどこに行こうか、などととりとめのない話をしました。
ほどなくして、待望のクラフトビールが登場。グラスに入った琥珀色とレモン色のビールには上品な気泡が沸いています。二人とも思わずにっこりです。山梨では車が中心の生活なので、休日でも昼間からアルコールを飲むことはほとんどありません。これも、東京生活ならではの愉しみの一つ。
乾杯をしてグラスを口に運ぶと、その軽やかな喉越しに思わずゴクリと音を立てて飲み込みました。ほんのりフルーティな酸味が爽やかさを増します。
夫が選んだビールは、ホップの香りが効いていて苦味もあり、昔ながらの味わい。お酒好きの夫はすっかり気に入ったようでした。
一緒に注文したスープは、生姜がピリッと効いたカレー風味。ビールにスープ、というのが一見変わった組み合わせのように感じますが、スパイスが効いていて不思議とよく合います。
また、普段はお刺身や煮魚が多いぶりも、カルパッチョで頂くとまた違った味わいです。
シュリンプのピザは、メニューでは「シュリンプ、スキャロップ、カラマリ、バジルペーストのシーフードピザ」という長い名前でした。
シュリンプとバジルペーストはわかりますが、あとはよくわからなかったので、こっそりスマホで調べてみると、スキャロップとはホタテ、カラマリとは調理されたイカのことで、なるほど、シーフードピザだと納得。
具もたっぷり、生地もふかふかとほどよい厚さで、バジルソースの緑とシュリンプやドライトマトの赤がきれいな彩りのピザです。
一枚を二人で分けて食べましたが、普段お昼は軽く済ませているので、ちょうど良い分量でした。
ピザに移る頃には、夫はペールエールを飲み干し、続いてインペリアルスタウトという黒いビールを注文。苦味が強くてほんのりコーヒーの風味がするそうで、少しだけ味見させてもらいました。同じビールでも違う飲み物かと思われるくらい香りと味わいが異なり、クラフトビールの醍醐味を堪能できました。
レストランでは、一時間くらいかけて食事をしながら、ゆっくりとビールを楽しみました。
お昼にこんなにゆっくり夫と食事をするなんて本当に久しぶりでした。加えて初めてのウォーターフロント。おしゃれなブルワリーレストランでの体験に大満足し、お店をあとにしました。
外に出ると、学生さんらしいグループが、先ほどのふれあい橋を渡って何やら語らいながらやってきます。どうやら近くに東京海洋大学のキャンパスがあるようです。
時代もあるのかもしれませんが、こんなに洗練された街並みのなかでキャンパスライフを送れる学生さんたちが、少しだけ羨ましくなりました。
来たときとは違う道を通り、駅まで戻りました。途中、マンションの中庭に、きれいに剪定された寒椿が満開に咲き誇り、我が家の椿の花を思い出しました。
今度は夏にまた来てみたいね、と話しながら、駅の構内へと続く長い下りのエスカレーターに乗りました。
T.Y.HARBOR(ティーワイハーバー)
住所 | 東京都品川区東品川2ー1ー3(地図) |
アクセス | りんかい線天王洲アイル駅徒歩8分 |
営業時間 | 平日:11:30〜15:00 (14:00 L.O.) 土日祝:11:30〜16:00(15:00 L.O.) ※平日のみ、ベビーカーのダイニング入店は13:00〜 |
電話番号 | 03−5479−4555 |
公式サイト | https://www.tysons.jp/tyharbor/ |