山梨県でおすすめの日帰り温泉【源泉掛け流し】
周囲を山々に囲まれた山梨県には、たくさんの温泉が湧き出ています。
山梨の温泉のなかには、たとえば戦国武将の武田信玄が戦で傷を負った武士たちを癒したと伝えられている温泉もあり、俗に「信玄の隠し湯」と呼ばれています。
隠し湯というくらいなので、山梨の人々にとって温泉はあまり多くの人に知られたくない宝だったのかもしれません。
また、近年になって掘削された温泉のなかにも、観光地として有名な「石和温泉」や、雄大な富士山が見える「河口湖温泉」など、周りの景観と一緒に楽しむことのできる温泉もあります。
観光地ばかりでなく、山梨の大抵の市町村には日帰り温泉施設がいくつかあり、そのほとんどが入浴料1000円以下と手頃な料金であることも魅力の一つです。
この記事では、山梨県で生まれ育った地元民の一人として、個人的におすすめしたい源泉掛け流し(一部除く)の日帰り温泉を紹介したいと思います。
秘境の地、女帝の湯(早川町)
まず最初におすすめしたい温泉は、早川町にある「奈良田の里温泉 女帝の湯」です。
この温泉は、もちろん温泉そのものも素晴らしいのですが、早川町という町全体が、一つの秘境となっているのも魅力です。
早川町は、山梨県の西端に位置し、南アルプスの麓にある「日本一人口が少ない町」です。
NPO法人「日本で最も美しい村連合」に所属し、自然が豊かで空気も澄み、日々の喧騒やときの流れを忘れさせてくれる町です。
奈良田は、その早川町の最北端にあり、JR身延線身延駅から車でおよそ1時間ほど、甲府から行くにしても2時間近くかかる南アルプス山麓の山奥にあります。
国道52号線から富士川の支流、早川沿いに県道を進むと、やがて山あいに佇むいくつかの集落に出会います。
道中は、つづら折りの道をぐるぐる登っていくという道のりではなく、ひたすらまっすぐ早川沿いを進んでいきます。
やがて周りの山々が深く、川幅が狭まり、石はどんどん大きな岩に。気がつくと水の色が深いエメラルドグリーンになっている、といったイメージでしょうか。
早川町には、南アルプスの湧水スポットや、日本の東西の境目であるフォッサマグナ断層が露出している珍しい地形も見ることができます。
また、神秘のダム湖「奈良田湖」もあり、奈良田の里はその周辺の集落で、秘境のなかの秘境。それゆえ、奈良田でしか使われない言葉や踊り、風習などが今に伝えられ、独自の文化が育まれてきました。
奈良田温泉の歴史は古く、奈良時代にまで遡り、孝謙天皇がこの地で病を癒したという言い伝えも残っています。
女帝の湯の女帝とは、その孝謙天皇に由来します。奈良田という地名も、孝謙天皇が「この地も真に奈良だ」としたことから名付けられたと言います。
孝謙天皇にまつわる「奈良田の七不思議」という伝説もあるのですが、そもそも奈良時代に一体どうやってこの地まで来れたのか、謎と想像が膨らみます。
奈良田温泉は、南アルプスへの登山口の一つにもなっているので、秘境でありながらも知る人ぞ知る人気の温泉地になっています。
また、アニメ「ゆるキャン△」にも登場し、最近では聖地巡礼する若者も多く訪れるようになっているようです。
女帝の湯には、駐車場から5分ほど急な坂道を登るので、年配者には少しきついかもしれませんが、坂道を登っていくと、古民家風の食事処が併設された温泉が見えてきます。
この温泉の特徴は、なんと言っても、その「とろみ」です。
お風呂はもちろん源泉掛け流し。総檜造りの湯船も味わいがありますが、お風呂に足を入れただけで実感する、とろっとした感触。
肩まで浸かると、まるで化粧水にでもひたっているような肌触りで、2016年の温泉総選挙うる肌部門第3位に選ばれたのも頷けます。
また、脱衣所の流しに飲泉用のカランがあり、温泉水を飲むこともできます。味は少しだけ卵のような香りがして、しょっぱさがあります。
露天風呂はなく、内湯だけですが、窓からは神秘的な奈良田湖を眺めることができ、周辺の景色も含め、遠くても何度でも行きたくなるおすすめの温泉です。
併設された食事処では、郷土料理のほうとうや川魚の定食など町の食材を使った料理を堪能できます。
女帝の湯から、さらに坂道を上ったところには「古民家カフェ鍵屋」があり、早川町で作られた白鳳味噌を使った生パスタや、ジビエ料理の鹿肉のトマト煮など、すべて地産地消にこだわった食材と器で、ここでしか体感できないお洒落な奈良田の味を味わうことができます。
奈良田の里温泉は、県内の方なら、ドライブがてらの日帰りも可能です。
ただ、県外からの場合は、近くに宿泊できる温泉宿もあるので、宿泊してゆっくり温泉を味わうのもよいでしょう。
奈良田の里温泉 女帝の湯〔web〕
住所:山梨県南巨摩郡早川町奈良田486〔地図を見る〕
電話番号:0556−48−2552
駐車場:30台(無料)
定休日:水曜日(祝日は木曜日)年末年始
営業時間:【3/16〜11/15】 9時〜19時(30分前に受付終了)
【11/16〜3/15】 9時〜16時(30分前に受付終了)
入浴料:【一回入浴】大人550円、子ども(小学生)220円
【休憩・温泉何回でも】大人1500円、子ども(小学生)750円
※飲食持ち込み不可
泉温:41℃
※2020年3月から、これまで宿泊施設だった「奈良田温泉白根館」が、日帰り温泉のみの営業になります。こちらの温泉は、女帝の湯とは源泉が少し違いますが、美肌の湯でとろみがあり、気候で温泉の色が変わるといわれています。
奈良田温泉白根館〔web〕
周辺の宿泊施設
西山温泉は、奈良田の里温泉から車で10分ほどの所にある違う泉質の温泉です。
こちらも、歴史は古くなんと飛鳥時代、藤原鎌足の子・真人が発見したと言われ、「信玄の隠し湯」の一つでもあります。
西山温泉には、三軒の宿泊施設がありますが、なかでも「慶雲館」は「世界一古いホテル・旅館」としてギネスブックに認定されています。
その他、「蓬莱館」や「湯島の湯」では日帰り入浴もできます。以下は、全て源泉掛け流しです。
西山温泉 慶雲館〔web〕
西山温泉 蓬莱館〔web〕
西山温泉 湯島の湯〔web〕
泉質と眺めが魅力、韮崎旭の湯(韮崎市)
次にご紹介する、山梨でおすすめの温泉は、「韮崎旭温泉 韮崎旭の湯」です。
この温泉の最大の特徴は、驚くほど肌にまとわりつく、お風呂の泡つきです。温泉の色は、少し緑がかった色味なのですが、まるで炭酸の気泡のような泡です。
場所は、JR中央線韮崎駅から車で15分ほど。広々とした畑のなかにポツンと立ち、建物には目印の温泉マークがあります。
韮崎旭温泉がある韮崎市は、ノーベル賞を受賞した大村智博士の生家があり、世界中を歴訪した博士が、「世界一美しい景観」と絶賛する場所でもあります。
富士山、八ヶ岳、茅ヶ岳、南アルプス等の山々を360度ぐるりと見渡せる絶好のロケーションです。
温泉の歴史は新しく、1996年に介護施設を経営する管理人が掘削して噴出。湯量が豊富で飲泉もでき、ペットボトルなどに入れて温泉水を無料で持ち帰ることもできます。
浴室は、男女別の内湯が一つで、銭湯のようにこじんまりしていますが、源泉掛け流し、無加水、無加温と、天然そのままの温泉です。
一般的には穴場の温泉ですが、この気泡は全国屈指だと温泉好きのあいだで話題となり、今では県外からも多くの入浴客が訪れています。
館内に露天風呂がない代わりに、ウッドデッキのテラス席からのどかな田園風景が見渡せ、遠くに富士山や八ヶ岳が見えるなど、その広々とした眺めに心身ともにリラックスできます。
食事処はありませんが、休憩室は飲食持ち込み可能なので、昼食持参でゆっくり温泉を楽しむ地元の人も多いです。
近くには、大村智博士が開館した「韮崎大村美術館」や、樹齢320年の一本桜で有名な「わに塚の桜」があります。
また、車を30分ほど走らせれば小渕沢や八ヶ岳にもアクセスが良いので、日帰りでふらっと、ドライブの中継地点の立ち寄り湯としても是非おすすめしたい温泉です。
韮崎旭温泉 韮崎旭の湯〔web〕
住所:山梨県韮崎市旭町上條中割391〔地図を見る〕
電話番号:0551−23−6311
駐車場:バス5台、普通車25台(無料)
定休日:火曜日(祝日は水曜日)
営業時間:
入浴料:大人600円、子ども300円(3歳以下は無料)
※飲食持ち込み可
泉温:40.5℃
美肌の湯なら、はやぶさ温泉(山梨市)
山梨県内で、穴場の美肌の湯としておすすめしたい日帰り温泉が、山梨市の「はやぶさ温泉」です。
この温泉は、JR中央線塩山駅から車で約10分の市街地に建つ温泉で、魅力はなんと言ってもその泉質です。湯船もシャワーもカランも全て源泉掛け流し。さらに無加水、無加温、肌に優しい天然の湯です。
ここの温泉水を使った化粧水などコスメ商品や、飲用の温泉水も販売されているほどです。
お風呂に入ってみると、湯船からは温泉がどばどばと溢れ、毎分500ℓといわれる湯量の多さを物語っています。なめらかなお湯で刺激が少ないので、敏感肌の人や高齢者にも安心して入れると評判です。
湯上りに肌を触ってみると、しっとりなめらかな手触りを実感します。
はやぶさ温泉は、民間の施設ですが、内風呂のほかに露天風呂もあり、食事処や55畳もある休憩室、富士山がよく見える個室(別途有料)、整体ルームなども完備してます。
施設はそれほど新しくはないものの、お風呂場や休憩所も清潔に保たれ、露天風呂から見える日本庭園も手入れが行き届いています。
そのため、入浴だけでなく団体客などグループで宴会がてら一日ゆっくり利用する人たちも多いようです。
はやぶさ温泉の最寄駅は、JR中央線の塩山駅で、東京からは特急で2時間ほどです。
温泉の周辺には、武田信玄ゆかりの恵林寺や笛吹川フルーツ公園などがあります。
さらに、ぶどうや桃の産地としても有名な地域なので、温泉とともにフルーツ狩りや史跡めぐりなどの観光も満喫できるでしょう。
はやぶさ温泉〔web〕
住所:山梨県山梨市牧丘町隼818−1
電話番号:0553−35−2611
駐車場:バス5台、普通車50台(無料)
定休日:火曜日、年末年始(12/29〜1/2)
営業時間:10:00〜21:00
入浴料:【1日利用(入浴・大広間休憩)】大人1800円、子ども1100円 10時〜16時
【4時間まで(入浴・大広間休憩)】大人1300円、子ども800円 10時〜21時
【2時間まで(一回入浴)】 大人700円、子ども500円 10時〜21時
泉温:42℃
湯治にぴったり、増富の湯(北杜市)
山梨で温泉に浸かって本格的に健康増進を図りたいなら、おすすめの湯治場として「増富温泉」が挙げられます。
北杜市にある増富温泉は、歴史も古く、「信玄の隠し湯」の一つと言われています。また、1965年には、環境省から国民保養温泉地の指定を受けています。
療養目的で訪れる湯治客の多くは、旅館やホテルなどの宿泊施設を利用することが多いですが、気軽に増富温泉を楽しむ人のために、日帰り温泉施設「増富の湯」があります。
周辺には、日本百名山でもある瑞牆山や金峰山もあり、シーズンには登山客の立ち寄り湯としても賑わっています。
温泉のある増富地区は、地区をあげて温泉中心の健康増進に力を入れ、増富の湯でも地元の医院と連携している健康教室やファスティング(断食)プランなどを受けることもできます。
増富の湯では、源泉掛け流しの温泉が4種類あり、どれも低温(25℃、30℃、35℃、37℃)で、独特の匂いがし、茶褐色の鉱泉らしい源泉が特徴です。
温泉の入り方としては、低温の源泉に長く浸かることで効果が高まると言われているので、まずは自分に合った温度の源泉を選び、30分以上じっくり浸かりましょう。
源泉に長く浸かった後は、あがり湯として42℃の鉱石風呂に短時間入る、これがより健康効果の高い入浴方法のようです。
私は、どちらかと言うと熱めのお風呂が好きなので、用意されている温泉のなかでも高いほうの37℃にします。
37℃だと最初はぬるいものの、じっと長く浸かっていると不思議なことに体の内側からじわりじわりと温まってきます。
増富の湯には、その人の体の症状に合わせた温泉の入り方を教えてくれる「温泉入浴指導員」の方がいて、希望者には無料で入浴指導を行ってくれます(電話予約した方が確実です)。
また、館内には、とても珍しい「お風呂図書館」もあり、入浴法を理論的に学ぶこともできます。
増富の湯の周辺は「自然健康村」と名付けられ、本谷川の清流と緑濃い木々に溢れ、マイナスイオンいっぱいの環境です。
悠久の歴史が育んだ、自然の森が生み出す新鮮な空気をおもいっきり吸い、温泉にゆったり入る、都会の喧騒で疲れた心身をリフレッシュするにはうってつけの場所です。
その他、近くの観光スポットとしては、みずがき湖やビジターセンターがあります。
また、草木染め教室や星空観察など、自然と触れ合える色々な体験もできるので、老若男女問わず、ゆったりと楽しむことのできる温泉郷と言えるでしょう。
増富温泉 増富の湯〔web〕
住所:山梨県北杜市須玉町比志6438〔地図を見る〕
電話番号:0551−20−6500
駐車場:普通車80台(無料)
定休日:第4水曜日(12月〜4月までは毎週水曜日)
営業時間:【4月〜11月】10時から19時 【12月〜3月】10時〜18時
※最終受付は30分前
食堂営業時間:11時から15時
入浴料:中学生以上830円、4歳以上小学生まで500円
富士山がよく見える、ほったらかし温泉(山梨市)
源泉掛け流しではないものの、山梨県内で露天風呂からの眺めがいい絶景の日帰り温泉と言えば、「ほったらかし温泉」を挙げる人が多いのではないでしょうか。
一風変わった名前で有名なこの温泉は、首都圏からも車で2時間足らず、笛吹川フルーツ公園通りを登りきった緩やかな山頂にあり、アクセスも良いので、県内外から多くの観光客が訪れます。
私も、県外からの友人で、「富士山が見える温泉に入りたい」という人には、必ずこの温泉をおすすめしています。
露天風呂から甲府盆地と富士山が一望できるロケーションは、全国の展望温泉ランキングでも一位になるほどの絶景です。
温泉自体が山頂にあるので、目の前を遮るものがなにもありません。日の出から夜景まで営業しているので、景色も様々な表情を見せてくれます。
ほったらかし温泉で個人的に眺めが好きな時間帯は、日没から夜にかけた頃合いです。
夏の夕暮れ、茜色に染まる富士山を眺めながら、空の色が紫色に移りゆくなか甲府盆地の街の灯りが点っていく光景は、ため息が出るほど美しく、甲府盆地の見事な夜景が広がるまで、ついつい長湯をしてしまいます。
ほったらかし温泉の少し下あたりから撮影した甲府盆地の夜景、うっすらと富士山が見える
ほったらかし温泉の歴史は新しく、1999年に開湯します。
最初は、経営者が高齢者施設を作るために温泉を掘削したのが始まりで、その後、施設の建設が頓挫したため、せっかく掘り当てた温泉を一般に提供しようと始まりました。
そして、2003年には、別の源泉を掘削し、「こっちの湯」と「あっちの湯」の二つの温泉を楽しむことができるようになりました。
入り口で、「あっちの湯」と「こっちの湯」のどっちがいいか迷う人も多いと思います。
どちらも一回入浴ですが、それほど高温ではないので、ゆっくり長く浸かることができます。また、二つの温泉は、入浴料は同じですが支払いは別で、それぞれに内湯と露天風呂があります。
温泉内の広さは、「あっちの湯」の方が広く(「こっちの湯」の2倍ほど)、また日の出の1時間前から午後10時までと営業時間も長くなっています。
こうしたことから、山梨県外から訪れる観光客には、どちらかと言うと「あっちの湯」の方が人気があるようです。
逆に、地元の常連客はこじんまりとした「こっちの湯」を好み、ゆっくりと長くお湯に浸かっている人が多いとのこと。
いずれにしても眺めは素晴らしいので、リピートして両方入ってみるのもよいでしょう。
ほったらかし、という名前から、掘っ建て小屋のような施設をイメージするかもしれませんが、確かに手作り感はあるものの、内湯にはシャンプーやリンスなども備え付けられ、決して「ほったらかし」にされているというイメージではありません。
食事処としては、「気まぐれ屋」という朝食専門の食堂があり、特に日の出の温泉を楽しんだ後に頂く500円の卵かけご飯(ご飯・卵・納豆・味噌汁・漬物)は絶品と評判です。
また、「桃太郎」という軽食スタンドでは、温泉卵を揚げた「温玉揚げ」が人気です。
アニメ『ゆるキャン△』にも登場するこの料理は、ほったらかし温泉の名物料理の一つで、カリッと香ばしく揚げてあるのに卵の黄身がトロッと流れ出る食感はクセになる味わいです。
以下、「あっちの湯」と「こっちの湯」の違いです。
あっちの湯 | こっちの湯 | |
営業時間 | 日の出1時間前〜22時 | 10時30分〜17時(土・日・祝は22時) |
泉温 | 41.4℃ | 32℃(加温) |
眺め | 右手側に富士山 | 正面に富士山 |
また、2016年には徒歩3分のところに「ほったらかしキャンプ場」がオープン。
満天の星空のもと、宝石をちりばめたような甲府盆地の夜景、昼間は富士を望む絶景、そして近くには早朝から入れる温泉と、魅力満載のキャンプ場はオープン当初からキャンパーたちに大人気です。
3ヶ月前の朝9時からオンライン予約開始のようですがすぐにいっぱいになり、なかなか予約が取れないキャンプ場となっています。
公式サイトの「空き室お知らせサービス」を利用し、キャンセル待ちをするなど工夫しているようです。
ほったらかし温泉〔web〕
住所:山梨県山梨市矢坪1669−18〔地図を見る〕
電話番号:0553−23−1526
駐車場:普通車250台(無料)
定休日:年中無休
入浴料:大人800円、子ども400円 ロッカーは有料(100円)
昭和の懐かしさ漂う、下部温泉(身延町)
下部温泉は、富士山の西側にあたり、下部川に沿って立ち並ぶ温泉宿を中心とした温泉地です。
ここは昔から傷を癒す温泉として定評がありました。
起源は、平安時代と言われ、戦国時代に武田家から手厚く保護されたことを伝える古文書を保管している旅館もあり、戦で負傷した武士が傷を癒したと伝えられています。
明治以降も新渡戸稲造や井伏鱒二、高浜虚子、若山牧水などの文人らが多く訪れ、近年では、石原裕次郎が下部ホテルに手術後長く滞在したことでも有名です。
我が家でも、母、祖母の代から湯治に行くと言えば下部温泉と決まっていて、親戚のおじさんが手術した後に下部に湯治に行ったというような話もよく耳にしました。
子どもの頃、親に身延線の鈍行列車に揺られて連れて行ってもらったこともあります。
どの旅館に泊まったのかは覚えていませんが、下部川で川遊びをしたり、覆いかぶさるように迫る緑深い山々から聞こえた蝉しぐれなども、当時の夏休みの記憶とともに思い出されます。
下部川の清流には、今でも初夏になると源氏ホタルや平家ホタルが乱舞するなど、時代が変わっても美しい自然が残されている温泉地です。
下部温泉は、もとからある旧源泉と、2006年に湧出した新源泉とあり、基本的に泉質は同じですが、温度が大きく違います。
昔は、下部温泉と言えばぬる湯(31.3℃)が定番でしたが、新しい源泉は51.0℃と温度が高くなり、ほとんどの温泉施設で両方の源泉を楽しむことができます。
下部温泉には、公営の日帰り温泉施設が一箇所ありますが、民間の宿泊施設でも日帰り温泉ができるところも複数あり、昼食のついた日帰りプランもあります(参考 : 下部温泉の日帰り温泉【厳選】おすすめ6選)。
ちなみに、旅館では日帰り温泉は昼食と休憩がついた「日帰りプラン」として扱い、一回入浴の「立ち寄り湯」と区別されています。
下部温泉の源泉掛け流しで日帰り温泉としては「元湯旅館 大黒屋」や、下部温泉街からは少し離れますが、「不二ホテル」などもよいでしょう。
温泉街は、JR身延線の下部温泉駅からも近く、徒歩20分くらいのなだらかな坂道を上っていくと、30軒ほどの温泉宿が並び、昭和の温泉街を彷彿とさせます。
かつて滞在した文人らの文学碑があったり、武田信玄の「隠し金山」と言われた「湯の奥金山遺跡」の資料を展示した「湯の奥金山博物館」もあるので、それらを辿りながら散策するのもおすすめです。
全国でも数少ない金山の博物館では、主に戦国期の鉱山の作業をテーマに、ジオラマやシアターでわかりやすく解説してくれます。
人気のある砂金採り体験は、採った砂金をアクセサリーにすることもできるので、世代を問わず楽しむことができます。
甲斐黄金村湯の奥金山博物館〔web〕
下部温泉の源泉は飲むこともでき、実はこの地は日本のミネラルウォーターの発祥地でもあります。
かつて、「日本エビアン(現富士ミネラルウォーター)」として下部の鉱泉水を売り出したのが、日本のミネラルウオーターの始まりだと言われています。
また、下部温泉駅近くにある、「カフェ&鉄板レストラン藤川」では、甲州産の牛肉をリーズナブルにいただくことができます。
外観はおしゃれな古民家風の店で、鉄板焼きはシェフが目の前で焼き上げてくれるジュッジュッという音とともに鉄板の上で繰り広げられる芸術的な手さばきに目が釘付けです。
この絶品ステーキやハンバーグに感動し、東京からわざわざ食べにくるお客さんもいるそうです。
メニューも豊富で、もちろんお肉は種類によって色々選べますし、お肉が食べられないという人のためにはお刺身のセットもあります。
こんな山奥でお刺身? と不思議に思うかもしれませんが、意外にもお刺身が新鮮で美味しいです。山梨と言ってもこの辺りは静岡に近いので、新鮮な魚も手に入りやすいのかもしれません。
下部温泉郷公式サイト〔web〕
まとめ
生まれも育ちも山梨で、半世紀以上山梨県民として暮らしてきました。全ての温泉を知っているわけではありませんが、どの温泉がよかっただろうと振り返ったり、色々と周りの人に話を聞いているなかで、ここがおすすめだなと思う場所を挙げてみました。
山梨には、ほとんどの市町村に温泉があり、どこに行っても気軽に日帰り温泉を楽しむことができます。
歴史も、古いものから新しいものまであり、泉質も様々。山梨県内はそれほど広くはないので日帰り温泉のはしごも可能です。
温泉の近くには、山梨ならではの絶景や料理、歴史や文化などの観光地もあるので、もちろん日帰りでなく宿泊してゆっくり滞在もおすすめです。
以上、地元民が選ぶ、山梨の源泉掛け流しや穴場の日帰り温泉でした。