Yamanashi / Japan

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県内観光地

秋、紅葉が見頃の昇仙峡を歩く

秋、紅葉が見頃の昇仙峡を歩く

遊歩道の散策

遊歩道から覚円峰を臨む

秋の終わりの11月下旬、仕事休みで帰省中の息子とドライブがてら昇仙峡の紅葉を見に行きました。昇仙峡の紅葉の見頃は、大体11月上旬から下旬頃と言われています。

昇仙峡は、富士川の支流、荒川上流の渓谷で、秩父多摩甲斐国立公園の一部、国の特別名勝地にも選ばれています。

特に紅葉の時期の渓谷美は有名で国内外の多くの観光客が訪れ、土日はかなりの混雑になります。その日は平日で午前11時すぎに出かけましたが、それほど混雑はしていませんでした。

昇仙峡は甲府駅から車で20分くらい、いくつかのドライブルートがあります。今回は県道7号線を通り、甲府市の平瀬浄水場を経由して上るルートで行きました。

このルートは交通量もそれほど多くなく、市街地からは15分ほどの道のりで昇仙峡の下流の入り口、長潭橋ながとろばしに着きます。

長潭橋

長潭橋はアーチ型の橋で、大正14年に架橋され、昇仙峡の玄関口として親しまれてきました。

老朽化のため現在架け替え工事が行われていますが、重要な土木遺産なので歩道橋として残す予定だそうです。

長潭橋からの眺めと紅葉

長潭橋から仙娥せんが滝までの約6キロメートルの渓谷は、削り取られた花崗岩の断崖や色々な形をした奇岩があり、四季折々の姿を楽しませてくれます。

渓谷沿いということで崖のすれすれを進むような険しい道を想像するかもしれませんが、この辺りは遊歩道も整備され、安心して散策することができます。

遊歩道は、車で通る場合(一方通行)は平日のみ通行可能で、土日祝日は歩行者優先のため通行禁止になっています。また車で行けるのも半分ほどで、残りは歩きになります。

さらに、遊歩道だけでなく渓谷の上を走る県道「昇仙峡グリーンライン」のいくつかのポイントに公営の無料駐車場があり、途中で遊歩道に向かって歩いて下っていくことができるので、体力に応じて距離や道順を自由に選べるのも魅力の一つになっています。

画像 : 昇仙峡さわらび ガイドマップ

通常は上りで行ってロープウェイに乗るというコースが多いようですが、この日は時間が限られていたことに加え、夏に訪れたときに長潭橋から上りのコースを歩いて息が上がってしまったので、今回は上流から下りのコースを歩くことにしました。

まず車でバス停「滝上」のある影絵の森美術館近くまで行き、美術館から車を降りて歩いていきます。

息子は私と一緒に歩くのが気恥ずかしいのか、駐車場があるバス停「グリーンライン昇仙峡」まで先に行って待っていてくれることになりました。

影絵の森美術館

遊歩道が整備されているとはいえ、やはりスニーカーのほうが歩きやすく、リュックを背負ってのウォーキングスタイルで意気揚々と歩き始めました。

美術館の左手の橋を渡ると土産物品店が並ぶ小径があり、店の合間を抜け、階段を降りていくとすぐ左手に水しぶきの音とともに滝が見えてきます。

この滝は、「仙娥滝」といい、昇仙峡の名所の一つになっています。

仙娥滝

名前は、中国の神話に登場する月に行った仙女に由来し、この「仙娥」とは月を意味します。確かに言われてみると、猛々しい滝ではなく、繊細で女性的な美しさを感じます。

紅葉する木々の間からほとばしる水しぶきは、夏の冷涼感とはまた違った味わいです。

平日とは言っても紅葉シーズン。そこそこの人出で賑わい、家族づれや若いカップル、カメラ好きの青年、老夫婦などの他、海外の人も多く、色々な言語が飛び交っていました。

皆、目の前で流れ落ちる壮麗な滝を眺めたり、写真撮影をするなどして佇んでいます。

ですが、私のウォーキングはまだまだ始まったばかり。先を急ぎました。

しばらくいくと昇仙橋という小さな橋があり、橋からの渓谷の眺めも素晴らしく、この辺りでも観光客の人々が橋の上から周囲の紅葉を撮影していました。

昇仙橋から河原のせせらぎが聴こえる遊歩道をのんびり進むと、まもなく石門という名所に着きます。

ここでも写真を撮っているひとがいて、そのなかには中国人の子ども連れの家族が4人で交互に写真を撮っていました。

きっと家族で一緒に撮りたいんだろうなあと眺めていると、視線を感じたのかにこにこしながら近寄ってきます。あうんの呼吸でシャッターを押す動作をすると、カメラを渡されました。

こんなとき言葉はいらない、笑顔ひとつで通じるなと思ってシャッターを押し、撮れた写真を「OK?」と聞きながら見せると、実に流暢な日本語で「ありがとうございます」と言われ、びっくりしてしまいました。

石門

石門は大きな岩を人間がくりぬいたように見えますが、これも自然の侵食によるもので、しかもアーチ型の石の先は少し空いています。

悠久の歴史が造った自然の造形美に感嘆しました。

さらに渓谷を歩くと小さなあずまやがあり、その手前に石碑が立っていました。石碑は、江戸時代にこの地を拓いた「長田円右衛門」の碑でした。

長田円右衛門は、江戸時代後期、岩盤が連なる深い谷の秘境に住むこの地域の人々のために生活道路を切り拓いた人で、その功績により昇仙峡は徐々に世間に知られるようになったそうです。

あずまや

長田円右衛門の碑

この辺りでは、前後に数人の観光客が見えるくらいで静かに紅葉の鑑賞ができました。渓谷を流れるせせらぎと風で舞い落ちる枯葉の音が耳元に優しく響いていました。

そういえば、子供の頃、この遊歩道を馬車に乗ってのぼったことがありました。あの馬車はどうしたんだろう。あとで聞いたら、少し前に廃止になったとのこと。

かっかっという蹄の音や、馬糞の匂いも懐かしく思い出されます。

もみじの間から見え隠れする清流

ほどなく特徴のある切り立った岩肌が見えてきます。これも昇仙峡の名所のひとつ「覚円峰かくえんぼう」です。

覚円峰は花崗岩が侵食してできたもので、その昔、覚円という僧侶がこの岩の上で修行したことからこの名前がついたとのこと。

この崖は高さが180mあり、奇岩が居並ぶ昇仙峡のなかでも一番見応えのある断崖です。

その覚円峰と向き合っているのが天狗岩という名前の断崖。でこぼことした岩肌が天狗の横顔に見えるというのが、その名前の由来のようです。

切り立った断崖の上での修行といい、天狗といい、時代も地域も超越した異次元の空間が広がります。

左が覚円峰 右が天狗岩

近くには、覚円峰を眺めながら食事や一休みができる「金渓館きんけいかん」という茶店があります。今年の夏に来たときはそのお店のテラス席で、冷たいほうとうの麺「おざら」や岩魚の塩焼きを食べました。

すぐ目の前に広がる渓谷と緑の木立。水の音までもご馳走で、涼を感じながらいつまでものんびりしていたのを覚えています。

季節変わって、この日は絶好の紅葉日和。覚円峰の白い岩肌と紅葉の赤や黄色の対比が美しく映えています。金渓館の樹齢100年以上とも言われるもみじも彩りを添え、絵に描きたくなるような光景でした。

きっと、春も冬もそれぞれの季節感あふれる絶景が楽しめる場所ではないかと思います。

金渓館には以前、東京の友人を案内したこともありますが、手に取るように間近に見える自然を満喫、都会とは全く違った非日常をじっくり味わえたようで、とても感動していました。

先ほども触れましたが、平日は車で長潭橋から金渓館まで遊歩道を上ることができるので、歩くのが大変な人は平日に車でゆっくり渓谷沿いを眺めながら訪れるのもおすすめです。

金渓館 テラス席

さて、そろそろお腹もすいてきたので息子が待っていてくれるバス停まで、先を急ぐことにしました。

美術館から金渓館までは時間にすると、写真を撮りながらゆっくり歩いて30分ほど。なだらかな下りだったので、今回は息が上がることもなく、あっという間に歩いてしまいました。


さらに何軒かホテルや食事処を過ぎ、遊歩道から県道へと石のアーチをくぐってバス停まで上って行きました。

遊歩道から県道への上り坂


「食事処 一休」での昼食

お昼は、息子と一緒にバス停の近くの「一休」というお店でほうとうを食べました。

この日は暖かかったのですが、暖かいにもかかわらず、11月の声を聞くとなぜか暖かいほうとうが食べたくなるのは山梨県人だからでしょうか。一休では定番のかぼちゃほうとうを頂きました。

食事処 一休

一休のほうとうは、野菜も味噌も自家製、とても懐かしい家庭の味でした。なかでもじゃがいもは煮込んでも崩れることなく、さりとて固過ぎず、ねっとりとした歯ごたえ。

お店の人に聞くと、やはりみなさんに地元産の野菜が評判のようです。昇仙峡の落ち葉を堆肥にした有機栽培の野菜とのこと。体に優しい美味しいほうとうでした。

一休のほうとう

この日は朝11時頃に出発し、昇仙峡の紅葉散策をし、ほうとうを食べ、時間は2時頃。

息子もひとりでぶらぶらと歩いてみたようで、「そろそろ帰るけ」「うん」と息子の運転で帰路につきました。

ABOUT ME
なえ
山梨生まれ山梨育ちのおばちゃん(おばあちゃん)。セカンドライフ。地元山梨の色々な場所を巡りながら、美術館の感想やおすすめの情報、雑学などをブログに書いていきたいと思います。