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美術館めぐり

南アルプス市立美術館〜名取春仙の美術館〜(南アルプス市)

南アルプス市立美術館

南アルプス市立美術館

南アルプス市立美術館は、当地出身の日本画家「名取春仙(なとりしゅんせん)」の業績を紹介する美術館として1991年(平成3年)に開館しました。

当初は、美術館名も春仙の名を冠した「春仙美術館」としてスタートしましたが、より幅広く市民のための芸術の発信基地に、2018年「南アルプス市立美術館」としてリニューアル。

小さな地方の美術館ですが、リニューアルしてからはジャンルにとらわれず、「ピカソ」や「いわさきちひろ」など幅広い作家の企画展示も実施。

南アルプス市美術館の所蔵作品は「名取春仙」の作品および資料が2000点と、まさに春仙の専門的な資料館でもあります。展示場のスペースが限られているため、常設展と企画展の区別がなく、春仙作品も含め年に数回入れ替えで展示を行なっています。

名取春仙は、1886年、現在の山梨県南アルプス市小笠原に生まれ、幼少の頃に上京、画塾にて日本画を学びました。

その才能は早くから認められ、数々の賞を受賞。東京美術学校(現・東京芸術大学)を経て、日本画の創作に意欲的に取り組む一方、東京朝日新聞社に入社し、夏目漱石の『三四郎』はじめ二葉亭四迷、島崎藤村などの新聞小説の挿絵も手掛けています。

また、演劇界とも親交が深く、初代中村鴈次郎や中村吉右ヱ門など数多くの人物画(役者版画)も描きました。

美術館の展示室は1階と2階に分かれ、順路として2階展示室から始まる構造となっています。

私が訪れたときは、名取春仙の真骨頂である歌舞伎役者を描いた浮世絵の肉筆画と、今回初公開の『関東大震災絵巻』が展示されていました。


最初の順路である2階展示室には、『西王母』『楚蓮香』など繊細なタッチで描かれた日本画や、『市川中車 外郎売』『市川海老蔵 六段目の勘平』など有名な歌舞伎役者の肉筆画を展示。

肉筆画とは、筆で直接紙に描かれたもので、特に浮世絵のジャンルで版画と区別するために生まれた言葉といわれています。描かれた歌舞伎役者はいずれも有名な役者ですが、その柔らかい筆遣いに、春仙が商業的な意味合いだけでなく、その役者の奥の芸までも表そうとしていた眼差しが垣間見えるようでした。

また、1階には、今回初公開された『関東大震災絵巻』が展示。

この作品は大正12年9月に発生した関東大震災を描く記録絵画で、これまでは名取春仙作という確認がされなかったのですが、東京の春仙版画の版元を通じて発見され、直筆と確認。昨年(2018年)、南アルプス市立美術館が購入し、今回初公開のはこびとなりました。

巻物として保存されていたので、状態もきわめて良かったとのこと。本作品は、絵画的な価値だけでなく被災当時を知る大変貴重な歴史的資料でもあります。

大正12年当時、37歳だった春仙は東京の中野に在住。作品は、震災のなかでも被害の大きかった本所と新吉原の様子を描いた作品で、2巻とも被害の様子が4枚の絵画に時系列で描かれています。

学芸員の方に伺ったところ、一体いつ春仙が訪れて記録したものかは定かではありませんが、その克明さから、おそらく震災直後に取材に行って描いたのではないかとされています。

日本画家としてだけでなく、挿絵画家として新聞社に入社していた名取春仙でしたが、時代の大きな出来事を自分の筆でなんとしても後世に残しておかなければとの鬼気迫る迫力を感じる作品です。

ゆったりと過ごせるロビー

南アルプス市立美術館は、市民ギャラリーとしても開放、また富士川流域の郷土作家の展示も開催するなど、広く地域に開かれた市民美術館です。

美術館情報

南アルプス市立美術館[web

住所:南アルプス市小笠原1281[地図を見る

電話番号:055-282-6600

開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は4時30分)

休館日:月曜日(祝日は翌日)および年末年始、展示替期間

入館料:企画展示による。常設展は300円。


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なえ
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山梨生まれ山梨育ちのおばちゃん(おばあちゃん)です。二人の男の子の子育てもここ山梨で行いました。地元山梨の色々な場所を巡りながら感想やおすすめ情報などを書いていきたいと思います。巡るのはまず美術館、それから酒蔵やダムなども考え中です。