Yamanashi / Japan

〈景品表示法に基づく表記〉記事内に広告を含んでいる場合があります。

美術館めぐり

影絵の森美術館と昇仙峡(甲府市)

影絵の森美術館(甲府市)

影絵の森美術館

甲府市の北部にある影絵の森美術館は、1992年に渓谷美で有名な昇仙峡(しょうせんきょう)に開館。

世界的な影絵の巨匠、藤城清治氏自らが監修設計したこの美術館は、「世界初の影絵美術館」として、1994年にはギネスブックにも掲載されています。

影絵作家の藤城清治氏は、1924年、東京都に生まれます。

幼少期より絵の才能が認められ、12歳のときに慶應の普通部に入学。仙波均平に水彩画や油絵の指導を受け、慶應の高校時代には、ピカソやマティスなどのモダニズム絵画に憧れます。戦争中は、海軍予備生となり、赴任地の九十九里浜では少年兵と一緒に指人形を使った演芸会も行なっています。

戦後、慶應義塾大学に復学した藤城清治氏は、講師の小澤愛圀によって影絵芝居を知り、人形と影絵の劇団「ジュヌ・パントル」を結成。その後、花森安治に認められた藤城氏は、1948年に、雑誌『暮しの手帖』で連載した影絵が人気となり、影絵作家として広く知られるようになります(連載は1996年まで続きました)。

70年代にテレビで活躍したカエルの「ケロヨン」も、藤城清治氏が描いたキャラクターです。

この影絵の森美術館では、藤城氏の所蔵作品の中から不定期に入れ替えをし53点を展示。館内には車椅子やスロープ、多目的トイレも完備されるなどバリアフリーも充実し、山梨県の「バリアフリー事務所」としても認められています。

また、ペットは抱っこするかケージに入れれば一緒に入場することも可能です。

画像 : 影絵の森美術館

次に、展示について紹介したいと思います。

常設ギャラリーの「第1展示室」は地下にあります。地下に展示物がある美術館は珍しいように思えますが、作品をより美しく鑑賞するために、自然光が入らない地下室に展示してあると言います。

階段を下りていくと、そこは真っ暗闇の空間。静かな音楽が流れ、次の瞬間、光とファンタジーの世界が一気に浮かび上がります。

こびとや人魚姫など、色とりどりの幻想的な影絵は時間も空間も飛び越えた不思議な世界に迷い込んだようで、自然光の届かない闇が作品の光を引き立てます。

特に、水と鏡を効果的に使った作品『花園のシンフォニー』は、鏡の反射でどこまでも続く影絵のなかに吸い込まれそうになります。

藤城氏の影絵は、切り抜いたトレーシングペーパーやカラーフィルムなど、様々な紙を数枚から数十枚も重ねて原画を作り、裏側からライトを当てて浮かび上がらせる独特の技法です。

紙を切り抜くのに、そのほとんどを方刃(片刃)カミソリを使って鋭くも優しい線を創出、まさに紙と光と技法が編み出した総合芸術と言えます。

藤城清治氏の幻想的な世界観に浸ったあと、ゆっくりと地下の展示室から階段を昇ると、一転して違う趣の「第2展示室」になります。

そこには“日本のゴッホ”と呼ばれている山下清の貼絵やペン画など39点が展示してあります。

山下清は1922年に東京浅草に生まれ、全国を放浪の旅をしながら多くの傑作を生み出した画家です。ドラマ『裸の大将』のイメージも強いかもしれません。

画像 : 大阪戎橋にたたずむ山下清(1955年) –  Wikipedia

山下清はここ昇仙峡も好んで訪れ、その独特の感性でこの地の渓谷美も作品に残しています。

このように影絵の森美術館は、影絵だけでなく、年1回の企画展示も含め多様な作品に触れることのできる美術館で、静かな環境に囲まれ、ゆっくりと落ち着いて芸術を堪能できます。比較的こじんまりとした館内で、所要時間は約1時間前後です。

アクセスは、甲府駅から「昇仙峡滝上」行き(冬は昇仙峡口までの運行)で約50分、車やタクシーでは40分程度で着きます(タクシーの場合、帰りは呼ぶ必要があるので注意しましょう)。

施設情報

影絵の森美術館 [ web ]

住所 : 山梨県甲府市高成町1035-2 [地図を見る]

電話番号 : 055-287-2511

開館時間:午前9時~午後5時 年中無休

料金 : 大人800円 中学・高校生500円 小学生400円 園児200円


昇仙峡(しょうせんきょう)

影絵の森美術館を出て橋を渡ると、お土産物屋さんが何軒かあり、さらに進むと昇仙峡の遊歩道に通じます。

昇仙峡は日本一の渓谷美と言われ、国の特別名勝にも指定されています。

6キロメートルほど続く渓谷沿いには、遊歩道が整備されていて、長い年月をかけて削り取られた花崗岩の断崖や奇岩は変化に富んだ絶景です。

秋、紅葉が見頃の昇仙峡を歩く秋、紅葉が見頃の昇仙峡を歩く 遊歩道の散策 遊歩道から覚円峰を臨む 秋の終わりの11月下旬、仕事休みで帰省中の息子とドライブがてら...

この辺りは富士川の支流、荒川の上流域で、豊富な清水の流れとともに、春夏秋冬それぞれの風景を味わうことができます。

県道昇仙峡グリーンラインから覚円峰(左)を望む

遊歩道のコースは、15分くらいのお散歩コースから1時間半くらいかけて散策するトレッキングコースまで何種類かあり、体力に応じて歩くことができます。

また、遊歩道の上を走る県道昇仙峡グリーンラインに公営の無料駐車場が間隔を置いて3か所あるので、そこに車を置いて遊歩道に降りてくることもできます。

ただし、紅葉シーズンは駐車場が混み合いますので、確認が必要です。

昇仙峡 仙娥滝(せんがたき)

影絵の森美術館は上流の方に位置していますが、そこから下ってくるとすぐに見える仙娥滝は昇仙峡のシンボルになっています。

どうやってここまで流れてきたのかと思うくらいの巨岩があちこちに点在し、間を勢いよく流れ出る水音はとても心地よく、心癒されます。


昇仙峡遊歩道ところどころに見られる巨岩

また、近くの羅漢地山(弥三郎岳)山頂へのロープーウエイは日本3高峰(富士山、北岳、間ノ岳)を一望できる絶景ポイントとしておすすめです。

麓の仙娥滝駅から山頂パノラマ台駅まで約5分、往復大人1300円、子ども650円ですが、前売り券や影絵の森美術館とのセット券がお得です。

平成の名水100選に選定されました

昇仙峡を流れる清水は、環境省が認定する平成の名水百選にも選ばれており、昇仙峡さわらび [ web ] にて名水「森と水晶の雫」を購入することができます。

美術館近くのおすすめカフェ

森の駅

シーズンオフには、美術館への入館で飲み物サービスがつきます。

お土産には、生はちみつが人気です。南アルプス市で採れた天然はちみつは、無添加無加工で、すっきりとした味わいです。

そのはちみつを使用した、お菓子類も売っています。また「森カフェ」では、はちみつをかけたハニートーストも人気。

食事処としては、他に、昇仙峡の水を使った「そば亭みつや」もあります。

森の駅 [web]

ABOUT ME
なえ
山梨生まれ山梨育ちのおばちゃん(おばあちゃん)。セカンドライフ。地元山梨の色々な場所を巡りながら、美術館の感想やおすすめの情報、雑学などをブログに書いていきたいと思います。