富士川・切り絵の森美術館(身延町)
身延町にある「富士川・切り絵の森美術館」は、日本では数少ない切り絵専門の美術館として、2010(平成22)年に開館しました。
山梨県の富士川沿いに広がるこの地域は、古くから和紙作りが盛んで、「切り絵の森美術館」も手すき和紙と切り絵のコラボレーションをテーマにしています。
美術館は、53haの広大な敷地を誇る「富士川クラフトパーク」の中にあり、常設展の「時計台ギャラリー」と「道の駅ギャラリー」、また企画展の「芝生ギャラリー」の三つのギャラリーから成り立っています。
共通券で入館できる「時計台ギャラリー」と「道の駅ギャラリー」の常設展示には、山梨県富士吉田市出身の「百鬼丸」さんを始め、「関口コオ」さんなど国内外の有名な切り絵作家の作品が約250点展示されています。
「切り絵」というと、昔懐かしい寄席などの「紙切り」のイメージがありますが、「紙切り」は紙をはさみで切り形を作っていく伝統芸能のことで、「切り絵」とは別のものです。
それに対して「切り絵」は絵画手法の一つで、紙を切り、その独特の切り口の線や断面を生かしながら貼って描いていくものです。
また白と黒のモノトーンの印象が強いですが、色彩豊かな作品も多く、一枚一枚が実に鮮やかで、繊細さの中にそれぞれの作家の独自の世界観が表れています。
日本において切り絵の歴史は意外に古く、奈良時代に神事で使われていた伝統様式や、京友禅の型紙から発展したとも言われ、切り絵芸術については、いまだにその定義や技法は確立されていないようです。
「芝生ギャラリー」で行われる企画展示では、訪問したこの時は「坂部信子のきりえ展」を開催していました。
坂部信子さんは、愛知県岡崎市在住の切り絵作家で、1975年頃から切り絵に取り組み、国内外のスケッチ旅行を通して人々の暮らしや風景・祭りなどを描き続けています。
光を効果的に使って描いた彼女の作品は、もはや切り絵というより、工芸と絵画の両方を合わせた総合芸術といってもいい印象でした。
坂部信子 右:『岡崎城と五万石藤』 左:『岡崎市立図書館(りぶら)』
切り絵の森美術館は、ギャラリーが公園内に点在しているというのも広い敷地ならではの特徴で、緑豊かな自然の癒しを感じながら、切り絵の持つ独特の世界観に浸ることのできる美術館です。
富士川・切り絵の森美術館[web]
住所:山梨県南巨摩郡身延町下山1597[地図を見る]
電話番号:0556-62-4500
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(4月~9月)
午前10時~午後5時(10月~3月)
休館日:毎週水曜日(祝日は翌日)
入館料:常設展2館で一般500円、小中学生200円 企画展は別途