薮内正幸(やぶうちまさゆき)美術館
薮内正幸美術館は、2004(平成16)年に開館した割と新しい美術館です。
国道20号線(甲州街道)から県道に入り、緑の木々のトンネルを行くと美術館入り口が見えてきます。
広い駐車場入り口の建物ではなく、奥の森の中に、見えてくるのが薮内正幸美術館です。
薮内正幸美術館は、動物画家である薮内正幸氏(1940-2000)が描いた鳥や動物、虫等の原画を1万点以上収蔵し、日本で唯一の動物画専門の美術館です。
この美術館は、常設展示はなく収蔵作品の中から定期的に作品を入れ替えているので、その都度新しい作品を鑑賞することができます。
森の中のロッジのようなこじんまりした外観は、長旅の訪問者を優しく迎え入れてくれます。
入り口の温かみのある看板は、薮内正幸氏と親交のあった田島征三氏の筆によるものだそうです。
スリッパに履き替え受付をすると、薮内氏の描いた動物や鳥の絵の中から好きな入場券を選ぶことができます。色のキレイな入場券を見ただけで、童心に帰ったようにわくわくさせてくれます。
左手には、色紙や絵本、絵ハガキなどのグッズコーナーがあり、展示室は右手から入ります。
今回は「にわやこうえんにくるとり」と身近ないきもの展という企画展示でした。
「にわやこうえんにくるとり」は、1973年に出版された本で、今回その原画が初めて全点公開となりました。
薮内氏は、多くの動物の絵本や図鑑画を描いた画家です。
絵を見れば、誰もが子どもの頃一度は目にしたことのある絵だと思います。あるいは、子どもたちに読んであげた図鑑を思い描く人もいるでしょう。
私も、あ、この絵を描いた人だったのかと、とても懐かしく思い出しました。
展示室の外から、概観なら大丈夫ということで写真を撮らせて頂きました。
とても明るくて木の温もりが感じられる展示室です。
まず展示されているのは、スズメやシジュウカラ、オナガやムクドリ、ツバメなど私たちに身近な鳥たちです。
薮内氏の絵は、鳥の羽の一本一本まで実に繊細に描かれていて、動きもとてもリアルで、今にも羽音をたてて飛び立ちそうなタッチです。
鳥の胸のふくらみなど、写真かと思われるくらい精密な筆で、しかも写真よりずっと本物っぽくて、その息づかいまで聞こえてきそうな、とても不思議で温かい絵です。
どこかで出会ったこともあるのではないでしょうか
また、展示室の一角には薮内氏の仕事場が再現してあり、当時薮内氏が実際に使用していた机や画材、たくさんの年代物の書籍や資料などが展示してあります。
驚いたことに、薮内氏の絵は全て独学で習得したものだったということ。子どもの頃から動物が大好きで、動物画を描き続け、図鑑画を描くために福音館書店に入社したそうです。
後にフリーになり、図鑑、絵本、広告など幅広い仕事を手掛けましたが、鳥や動物をこよなく愛し続けた姿勢は一貫して変わらず、環境保護にも深い関心を寄せていました。
一枚一枚の絵を観ると、薮内氏がどんなに優しい眼差しで、生き物をみていたか実によくわかります。
その温かみがこちらにも伝わって来て、観ているうちに思わず微笑んで、本当に穏やかな気持ちになってきます。
グッズコーナーの隣には、一杯100円のコーヒーもあり、森の見える木のベンチで自由にくつろぐことができます。
テラスの向こうには森が広がり、耳を澄ますと鳥たちの声がよく聞こえます。
展示室の鳥たちの声も聞こえて来そうです。
薮内正幸美術館[web]
住所:山梨県北杜市白州町鳥原2913-71[地図を見る]
電話番号:0551-35-0088
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時)
休館日:水曜日(8月は無休)、冬季(12月~3月中旬)休館他
入館料:高校生以上500円、小・中学生200円、幼児無料
近くのカフェ
ケルンコーヒー 白州本店
薮内正幸美術館を出て、国道20号線にぶつかるとすぐに見えてきます。とても可愛らしい外観なので目につきます。ショップとカフェが併設しています。
ケルンコーヒーは、世界中の厳選された豆を取り寄せ、南アルプスの天然水で淹れているのでコーヒーの種類の多さと美味しさは格別です。
くつろぎやすい店内で、食事もできます。
ここのカフェは、希少価値の「コピ・ルアック」という、ジャコウネコの糞から採れる未消化のコーヒー豆も扱っている専門店ですが、今回は無難なブレンドコーヒーを頂きました。
香りもコクも深い味わいです。
バニラアイスにエスプレッソのソロを添えたアフォガードは、ちょっぴりほろ苦い大人のデザートです。
ケルンコーヒー[web]